クライアントアース・会社法改正中間試案に関するパブリックコメント
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一般社団法人クライアントアースは、2026年4月2日より始まった会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案に対する意見募集に対して、同年5月にパブリックコメントを提出しました。
中間試案では、株式の発行や株主総会の在り方、企業統治の在り方に関する法制度の見直しについて議論がされています。気候変動への対応をめぐって株主と会社との建設的対話(エンゲージメント)がますます重要となる昨今において、今回の中間試案で提案されているような株主総会の在り方に関する法制度の見直しがなされれば、気候変動などのサステナビリティ課題に関して、株主提案による争点の提起が困難となり、株主総会におけると否とを問わず、市民株主、機関投資家によるエンゲージメントが形骸化し、多大なる悪影響を与えます。
クライアントアースのコメントでは、株主総会の在り方に関する見直しの中でも特に、株主の権利に影響を与える最も重要な改正案、すなわち(1)株主総会における株主提案の提出要件および(2)事前の議決権行使により株主決議が可決されたとみなす新制度について、反対意見を申し立てました。
1. 株主提案権に関する改正案への意見
現行の株主提案権の要件は、株主の総議決権の1%以上の議決権または300個以上の議決権としているが、中間試案では、この300個以上の議決権要件を廃止して1%以上の議決権のみとする、または、300個という議決権要件を法律または定款の定めにより1000個ないし1500個まで引き上げる、という提案がなされている。
クライアントアースは、主に以下の理由から、このどちらの案にも反対する。
· 300個議決権の要件を廃止するのは、1981年の制度導入時の大企業であっても株主提案を可能にするためという趣旨に反する。
· 総議決権の1%以上に要件を限定すると、時価総額上位の上場企業では100億円以上の株式保有が必要となり、個人投資家だけでなく機関投資家も提案困難となる。
· 総議決権の1%以上に要件を限定すると株主提案が大幅に減少し、コーポレートガバナンスの観点から国内外の投資家の信頼が低下する。
· 国際的にみても、米国・英国・豪州・ドイツなどは総議決権要件のほか金額・人数要件を併用しており、改正案は比較法的にみても過度に厳格な要件となる。
· 濫用的な株主提案があるとはいえ、否決された株主提案すべてが無価値というわけではない。相当数の賛成意見を得た株主提案は、会社経営にも影響し得る点で少数株主からの提案も大きな意味を持つ。
2. 事前の議決権行使によるみなし決議に関する改正案への意見
株主総会開催日前に議決権行使を行うことが認められているが、中間試案では、その結果、株主総会の決議の要件を満たしたときは、事前の議決権の行使により当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすことができるとする定款の定めを設けることが提案されている。
この改正案の趣旨は、株主総会当日の会社の負担を減らし、株主総会における説明義務違反などの手続的瑕疵を理由とする総会決議取消訴訟が提起されるリスクを減らすというものであることから、事前の議決権の行使により株主総会の決議があったとみなされたときは、株主総会における手続的瑕疵は決議取消事由にならない旨の規定の導入も提案されている。
クライアントアースは、主に以下の理由から、このどちらの案にも反対する。
· 株主総会前に決議が成立すると、株主総会は実質的な議論の場としての会議体ではなくなり形骸になる。
· 修正動議を求める機会が消失するなど株主総会当日の株主提案権の制限となる。
· 会社にとって説明義務を果たすインセンティブが低下し、株主総会を株主との対話の場と位置付けるコーポレートガバナンス・コードの趣旨に逆行する。
· 現行法においても、軽微な手続的瑕疵は裁量棄却制度により対応可能であり、改正の必要性が不十分である。