アプローチ

地球に生きる命を守る

いま、地球は深刻な転換期にあります。
二酸化炭素の排出によって気候変動が加速し、森林が失われ、私たちにとって欠かせない空気や海が汚染されています。
動物や植物を含む多くの生きものが、生存の危機にさらされています。

こうした世界規模の危機に対し、クライアントアースは法の力を活用し、適切なルールや規制を策定・強化・普及させることで、社会の仕組みそのものを変えていきます。
そして、人と自然が共に繁栄する、健やかで持続可能な未来の実現を目指します。

新たな法の可能性を切り拓く

私たちは、法制度、法の支配、そして正義のあるべき姿に真正面から向き合います。
法律の起草から、裁判所や規制当局による法律の適用・解釈・執行に至るまで、法体系全体に働きかけることで、地球とすべての生命の未来を守ります。

環境劣化や気候変動の影響を最も強く受ける人々やコミュニティが、自らの権利を守れるよう支援します。
また、環境に関する意思決定に、人々、検察、市民社会組織が参加できる仕組みを確保することで、法律が侵害された際には、裁判所でその権利を正当に主張できるようにします。

地球とビジネスの両立に向けて

気候危機への対応は一刻の猶予も許されません。しかし、持続可能な未来を実現するためには、個人や企業の行動変容を促すだけでなく、その基盤となる金融・経済システムそのものの変革が不可欠です。

いま求められているのは、グローバル経済と金融の流れを根本から見直すことです。これからの変化と新たな可能性に備え、経済的インセンティブと資金の流れを、地球環境と整合的な方向へとシフトさせていく必要があります。

法の活用のあり方

  1. 強力で実効性ある環境法の整備を支援

    私たちは、環境法が可能な限り強固かつ実効性のあるものとなるよう取り組んでいます。政策立案者への助言や法改正の推進を通じて、よりよい法制度の構築を支援します。

  2. 政府と企業の説明責任を追及

    法律は、実際に施行されて初めて意味を持ちます。クライアントアースは、10年以上にわたる法的活動の経験を活かし、必要に応じて政府や企業に対する訴訟も含め、責任を問う取り組みを行っています。私たちは、法を単なる理論ではなく、変革の手段として活用します。

  3. 司法と情報へのアクセスを推進

    環境法が広く理解され、遵守され、誰もが利用できることは不可欠です。クライアントアースは、日本を含む各国において、「知る権利」「参加する権利」「司法へのアクセス」の実現を促進しています。 またEUでは、環境法に反する行政判断に対して、個人やNGOが幅広く異議申立てを行えるようにするための法的キャンペーンを長年にわたり展開しています。

日本での活動

クライアントアースは、日本において主に気候変動対策とエネルギー移行の分野に注力しています。

私たちの目標は、日本のエネルギー転換を加速させるとともに、クリーン・エネルギー・ソリューションへの資本の再配分を支援することです。脱炭素化が進む国際社会において、日本の経済競争力を持続的に確保するためにも、こうした取り組みは不可欠です。

エネルギー移行の加速に向けて

日本は、温室効果ガスの大幅な削減に向けて、エネルギー移行を加速させる必要があります。法的にネットゼロ目標を掲げ、すでに気候変動による深刻な影響を受けている日本では、迅速な意思決定と実行力が求められています。

ネットゼロの実現には、低炭素なエネルギーシステムの構築が不可欠です。世界経済が脱炭素化に向かう中、再生可能エネルギー分野における日本の潜在力には、国内外から大きな期待が寄せられています。

独立系の研究機関(再生可能エネルギー研究所、Berkeley Labsなど)によれば、日本は安定かつ安全な電力供給を維持しながら、2035年までに電力供給の80〜90%を再生可能エネルギーで賄うことが可能とされています。(REI, Berkeley Labs)
一方で、2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、2030年時点で依然として化石燃料発電が全体の41%を占める見通しであり、国際的な要請に照らしても野心的とは言えません。

クライアントアースは、機関投資家や投資家グループと連携し、日本のエネルギー移行を法制度・市場の両面から後押しします。

グリーンファイナンスとトランジション・ファイナンスの拡大

トランジション・ファイナンスとは、ネットゼロ排出に向けた移行を支援するために、高排出部門や企業に提供される資金を指します。
グリーンファイナンスが主に低排出・ゼロ排出のプロジェクトを対象とするのに対し、トランジション・ファイナンスは、現時点で必ずしもグリーンとは言えないものの、将来的にグリーンな方向へと移行する取り組みを支援します。推計では、世界の経済活動の90%以上が炭素集約型の分野によって構成されているとされています。

日本政府は2024年、国際的な気候公約と産業競争力の強化、経済成長の両立を目指し、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」投資の拡大に向けて、2.65兆円規模のクライメート・トランジション利付国債(脱炭素成長型経済構造移行債、いわゆるGX経済移行債)を発行しました。2025年および2026年には、さらに1.5兆円の追加発行が予定されています。

しかし、これらの規模はGX推進に必要とされる全体的な投資額と比較すると、依然として限定的です。GX戦略における初期の資金計画では、今後10年間で150兆円を超える投資が必要とされています。

クライアントアースは、機関投資家や投資家ネットワークと連携し、グリーンファイナンスおよびトランジション・ファイナンスのさらなる拡大を支援しています。

 

グリーンウォッシュの回避

グリーンウォッシュとは、金融商品、投資戦略、または企業活動において、気候・環境面の主張が実態と乖離し、誤解を招く形で情報が伝えられることを指します。これにより、投資家や消費者が誤った意思決定を行うリスクが生じます。

近年、気候関連リスクの顕在化とともに、トランジション・ファイナンスを含む持続可能な金融に対する関心が高まっています。一方で、明確な基準や説明責任を欠いたままの情報開示は、市場の歪みや資本配分の誤りを招くグリーンウォッシュの温床となり得ます。

グリーンウォッシュは、法規制の強化や訴訟リスクの高まりにも直結しており、日本のGX戦略が掲げる「信頼性のある脱炭素社会の実現」にも大きな影響を及ぼします。

クライアントアースは、機関投資家および投資家グループと連携し、金融セクターにおけるグリーンウォッシュの回避と情報開示の質向上に取り組んでいます。

また、アジア各地域の金融機関に向けて、地域特性に即したグリーンウォッシュ対応ガイドを作成。これらのガイドでは、規制動向や国際的な執行事例を紹介し、実務に資する知見の提供を目指しています。

金融セクター向けグリーンウォッシュの見極め方・回避ガイド」 
クライメート・トランジション・ファイナンスのグリーンウォッシュに対処するための保護策」 

企業と取締役会に対する、堅実な移行計画と野心的な気候対策の推進支援

クライアントアースは、企業および取締役が、信頼性の高い移行計画と科学的根拠に基づく気候戦略を策定・実行できるよう支援しています。

信頼できる移行計画の要件

日本企業が気候関連リスクを管理しながら、低炭素経済へ円滑に移行し、競争力を維持するためには、政府のネットゼロコミットメント、規制要件、投資家の期待に応じた堅実な移行計画が不可欠です。

信頼性のある移行計画には、パリ協定や科学的知見に基づく目標設定、企業戦略への気候・持続可能性要素の統合、そしてグリーンウォッシュ・リスクを管理するための十分な透明性が求められます。

気候変動に関する取締役の信託義務

候変動がもたらす財務上のリスクと機会は、企業の取締役に対して、日本の会社法上の忠実義務および善管注意義務(いわゆるフィデューシャリー・デューティー)を通じた責任を生じさせます。

これには、物理的リスク(例:極端な気象現象や海面上昇など)および移行リスク(例:市場・政策・技術・評判・訴訟リスクなど)が含まれます。

日本銀行も、気候変動が金融システムに体系的な影響を及ぼすリスクを認めており、企業の取締役は、善管注意義務の一環として、気候関連リスクの理解・対応・戦略整合を適切に考慮する責任があります。

この戦略を中期経営計画に統合することにより、企業は気候対応へのコミットメントを示し、ステークホルダーからの信頼を高めることができます。

出典と補足

詳しくは、Commonwealth Climate and Law Initiative(CCLI)による2021年の報告書をご参照ください。日本における取締役の法的責任と、気候対応を怠った場合の影響について記載されています。
[CCLI報告書(日本語版)を読む]
[CCLI報告書(英語版) を読む]

今後の取り組み

クライアントアースは2024年、東南アジアの取締役向けに「気候行動ガイド」を発表しました。これは、気候関連の法的リスクやガバナンス要件に対応するためのツールであり、Climate Governance MalaysiaおよびEarth on Boardとの共同出版物です。

2025年には、取締役向けに日本語での「気候リーダーシップガイド」も発表予定です。

気候行動ガイド

3

日本の3大メガバンクは、2016〜2023年の累積期間および2023年単年のいずれにおいても、化石燃料関連企業への融資額で世界トップ10入り(出典:Japan Beyond Coal)

66

日本のエネルギーに占める化石燃料の割合は66%で世界92位(2023年度末時点、環境エネルギー政策研究所)​

952

2050年まで現在の政策が続いた場合における日本経済の損失額は952兆円(AIGCC)​

6

風力・太陽光による潜在的な電力供給量は総需要の6倍超(自然エネルギー財団)

グローバルでの活動

クライアントアースは、世界各地を拠点に、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に向けて、以下の重点テーマに取り組んでいます。

  • 農業とサステナビリティ
  • 大気汚染
  • 法務担当者のケイパビリティ強化
  • 化学汚染
  • クリーンエネルギー
  • 気候責任
  • 生息地および生態系の保護
  • 環境正義 (※オーフス条約の執行を含む)
  • 欧州グリーンディール  
  • 漁業と水産物  
  • 森林とコミュニティ  
  • 森林と貿易
  • グリーンウォッシュと企業責任
  • プラスチック汚染
  • 種の保全と生物多様性
  • 貿易と環境

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