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2024年3月21日
2024年3月21日 – シンガポール国立大学のサステナブル&グリーンファイナンス研究所(SGFIN)と協働したクライアントアースは、サステナビリティ・サミット2024に参加しました。このサミットは、シンガポールのカールトン・ホテルで開催され、「ネットゼロへのコミットメントがもたらすコストと機会」をテーマに、世界のネットゼロ移行に関する複雑な課題を科学的根拠に基づき議論する場を提供しました。会場には、業界リーダー、政策立案者、規制当局、金融機関、法律専門家などが集まりました。
サミットは、シンガポール副首相兼経済政策調整大臣のヘン・スイキャット氏による開会の挨拶で幕を開けました。ヘン副首相は、グリーン転換に資金を効果的に誘導するためには、堅牢な規制基準、優れた分析ツール、信頼性の高い金融プラットフォームが不可欠であると述べ、持続可能性に関連するスキルや能力への継続的な投資の重要性も強調しました。
続いて、シカゴ大学のマイケル・グリーンストーン教授(ミルトン・フリードマン記念特別経済学教授)が登壇し、世界的なエネルギー課題とネットゼロ移行の鍵となる手段について、鋭い洞察を披露しました。
クライアントアースの法律コンサルタントであるショーン・D・ツェンがモデレーターを務めたパネルでは、ネットゼロ移行における規制と法制度の動向が議論されました。
パネリストとして、 ティモシー・ゴー氏(Dechert LLPパートナー)、フランツィスカ・ツィンマーマン氏(Temasek持続可能性・気候変動担当ディレクター)、リー・ウェイリン氏(ラジャ・タン法律事務所 銀行金融部門サステナビリティ責任者兼パートナー)、マイケル・タン氏(シンガポール証券取引所上場政策・商品認可担当責任者兼サステナブルディベロップメントオフィス室長)が参加しました。
パネルディスカッションでツェンは、気候変動に関する情報開示の義務や、それが企業の移行計画の義務化にどのようにつながっているかについて掘り下げて語りました。これらの開示基準を採用する際に、企業が直面する課題についての洞察を共有しました。これらには、自らの限界を自覚すること、実施に十分なリソースを確保することなどが含まれました。ISSBのような報告基準が規制当局に組み込まれるようになったこと、また、こうした基準に関する取締役への研修が義務付けられることは有益であるとの見解を示しました。
本パネルでは、気候関連情報開示の義務化と、それが企業の移行計画策定の義務化にどうつながるかが中心議題となりました。ツェンは、企業が開示基準を導入する際の実務的課題として、「自社の限界認識」「十分なリソースの確保」などを挙げ、ISSB基準のような国際基準の制度化や、取締役向けの研修義務化が有効であると指摘しました。
また、グリーンウォッシュ対策も重要な論点となり、パネリストは規制・契約の両面からの対応を提言。契約書に適切な条項を盛り込むだけでなく、現場での監視体制の構築や、報奨制度(インセンティブ)と罰則制度(ペナルティ)の導入が必要であるとの共通認識が示されました。
イベント期間中の他のパネル・セッションでは、「経済成長と排出量のデカップリングを実現するためのエネルギーインフラの開発」、「コンプライアンスを超えて成長する:建築基準の変化を超えて対応する」また、「持続可能性目標達成のためのデジタル・イノベーションの活用」といったテーマも取り上げられました。